コンサルタントインタビュー: ここに何かあるかもと思える感度の高さが大事(谷口治季様)

最近、フリーランスとして独立することを考えている方から、フリーランスのリアルな事情が知りたい、とご相談を受けることが多くなってきました。そこで今回は、フリーランスコンサルタントとしてご活躍されて4年目の谷口治季様より、お話を伺いました。

谷口治季様の略歴
東京大学経済学部卒業。
野村證券でのリテール営業を経て、BCG及びリヴァンプで経営戦略策定・実行支援を担当。
フリーランスコンサルタントとして29歳で独立。現在は法人化し活躍されている。

フリーランスになろうと思ったきっかけは何ですか?

仕事のやり方・時間・報酬が自由

仕事の進め方や次に受ける案件の内容について、自分で決められる要素が多くなると思いました。会社にいると、次はこの仕事をお願いとか、こういう資料を作って、と上司に指示されますよね。ですが、お客様と直接やりとりし、全ての仕事内容を自分で決めて進められるなら手っ取り早いな、と思っていました。そうした仕事のやり方が自由になるのは、大きなポイントだと思います。

また、会社員時代に、案件仲介会社が掲載しているフリーコンサルタント向けの案件を見ていて、どうやら今より年収が増えそうだということに気づきました。裏を返せば、同じ収入でも自由な時間が増やすことができるということ。これは当時の自分には魅力的でした。

失敗したら会社員に戻ればいい

また、当時の年齢も独立したタイミングに関係してきます。僕は29歳で独立したのですが、その時の考え方として「独立して3年くらいやって32歳くらいで仮に全然上手くいってなかったとしても、最悪、会社員に戻ってやっていけるんじゃないか」との感覚がありました。

マネージャーとして経験を積んでからでなければ独立は…と経歴を心配される方もいますが、その発想からすると僕はむしろ逆ですね。例えば、マネージャーまでしっかり経験して独立したけれども上手くいかず、40代で会社員に戻ることになったとします。経験値は独立以前よりも上がっているのに、元より高い待遇で雇われることは難しいんじゃないかな、と考えていました。

実際フリーランスになってみたら、役職の経歴はお客様からしたらほぼ関係ないことに気づきました。実力勝負の世界だと思います。「俺の腕前は凄いのに、一流ホテルで料理長をしていた経歴がないから客が入らないんだ」なんて言っている料理人がいたらどう思うでしょうか。きっと問題は他にあるはず。それと同じです。

フリーランス初期の頃、どのように案件を獲得されていましたか?

フリーランスになる前に話を聞いていたエージェント会社があり、独立した後に案件紹介いただいて、フリーランス活動をスタートしていきました。

案件については、今でもエージェントからもご提案をいただきます。ですが、どちらかというと、以前の案件で一緒に働いていたフリーランスの方から新規案件をご紹介いただいたり、お付き合いさせていただいたお客様から別の会社をご紹介いただく方が多いです。こういった人との繋がりで案件をいただくことが、徐々に増えてきました。

人とのつながりを大切に

プロジェクトを通じて知り合う人は、同業者であればむしろ大事にしています。会社員時代の同僚よりも大事にしているかもしれません。数少ない理解者というだけでなく、他案件が厳しい時に助けていただけるという面もあります。ちなみに今は3案件に携わっており、いずれも別のフリーランスの方と協業して取り組んでいます。一人で進める案件もありますが、比率としては半分もありません。

稼働単価は横比較ではない

単価の感覚は、フリーランス初期の頃はよくわかりませんでした。今思うと安売りしていた時もあったかなと思います。

一つは、自分の価値が相対的にわかっていませんでした。そのため、エージェントが募集している価格を元に、自分ならこんなものだろうと思っていました。もちろん周りとの競争の中で自分の価格が相対的に決まるというのもあるのでしょうが、実際はあまり横比較で勝負になっている気はしていません。お客様のニーズをきちんと理解して適切な提案ができれば、「やりましょう。いつから始められますか?」となります。

もう一つには、相手のお財布事情を十分にわかっていなかったこともあります。同じ提案内容であっても、相手の会社の状況や時期によって価格は違ってきます。こちらの想定に対して、多めに払ってもよいから短期で仕上げてほしいということもあります。

つい自分にはこれが出来るからいくら、あの人はあれが出来るからいくらという風に考えてしまいがちです。特に会社員や独立当初のフリーランスの方々にとっては無理もありません。ただし、使い古された言葉の通り、価格は需要と供給の両方によって決まるものです。

経験がない業界の案件も受注されていますが何か特別な準備をされているのでしょうか?

表面上全く違うテーマに見えても、一段噛み砕いた作業内容には、何かしら今までの経験に近い部分があるものです。ただ、当然どうすればよいかよく分からない部分も出てきます。その中で、例えば、「最初はこの部分で役に立ちますので、より深い理解が必要となる部分は後半で取り組みますがどうでしょうか?」などとお客様と相談します。全く見当がつかなかったり、金額に見合う価値が出なさそうな時は、はっきりそう伝えるようにしています。

プロジェクト終了後には、そのテーマの理解が深まっているので、またできることが増えていきます。同じ業界の案件を何度も手掛けるのがあまり好きではないこともあり、経験にとらわれず面白そうな案件を受けていたら、結果的に少しずつ対応できることの幅が増えてきたというわけです。

フルコミットではない案件が多い中、ご自身のバリューをどのように最大化されていますか?

現在3案件を同時に受けていますが、特に夜中や土日に作業することもありません。

お客様の求めているものは何かをきちんとつかみ、これだったら価値が出やすいかなという部分を重点的に取り組むようにしています。価値が出ればよいのであって、いわゆるコンサルタントらしい形式にはこだわりません。

そのため、資料作成はあまりしていない方だと思います。分厚い資料を作ってもお客様も全部見ないので、Word 1枚の簡素な資料で議論することも多いです。お客様に提供する情報は多いほど良いと若いコンサルタントは考えがちですが、情報は少ない方が相手に伝わりやすい。資料をたくさん作って説明すればするほどお客様の意識も飛んでいってしまうので、お客様の知りたいポイントを伝えられるなら、100枚より1枚の資料の方がずっと良いです。

自分の立ち位置を明確に

「お客様の要望に極力応えるサービス業」という立ち位置だと恐らくフリーランス活動は苦しくなると思います。例えば、僕がある企業のために毎週10時間働くとしましょう。この時、価値の最大化に重きを置くと、お客様の要望は何でも引き受けがちです。結果として、10時間をオーバーしてしまうか、もしくは無理に10時間で収めるために十分な価値提供ができないかになってしまいます。本当はそうではなく、その10時間で何を行うのが最も効率的かを先方と共に考えるべきです。目的を揃えると、あれもこれも依頼されることは少なくなりますし、依頼された場合も優先度を確認して調整しています。

あなたが思う“フリーランスとして持つべきもの“は何でしょうか?

運ですね。より正確には、運を呼び込む心身の余裕と言えるかもしれません。

次々と良い案件にめぐり合い続けられるのは、一握りの幸運の持ち主だけでしょう。ただ、一見すると今の仕事に関係なさそうな話であっても、「これは何かあるかも?」と近づいていく感性やそれを新たな仕事の種にする力については、人によって結構差があると思っています。

近視眼的に合理的ではないという理由で断ったりせず、いただいた話に関しては割とフットワーク軽く聞きにいってみたりなど、比較的に受け皿は広めにしています。

そうした方法で自分にとって響く部分に厚みが出来ていけば、フリーランスとしての魅力も増していくことでしょう。

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