コンサルタントインタビュー:「これ以上下げられません」はあり得ない!間接経費削減のプロが語るノウハウ Part 1

明けましておめでとうございます。早いもので東京五輪まで残すところ数か月となりました。五輪熱の続いたこの数年も今夏を過ぎれば通常運転へと戻っていくでしょう。建設やインバウンド等を中心に投資が盛んに行われてきましたが、既に五輪後の景気冷え込みを懸念されている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。五輪後の景気変動においては賛否分かれるところではありますが、昨今緊迫している米中の貿易摩擦等その他にも懸念材料は後を絶ちません。そこで、2020年第1回目の本記事では、高利益組織構築の最も近道である間接経費削減に焦点を当て、間接経費削減のプロとしてご活躍されている笠井恒氏(以下敬称略)を、株式会社アイキューブの事業開発コンサルタント塚本貴映がインタビューしました。

この記事のポイント
1.間接経費削減のノウハウが分かる
2.高利益組織の構築のポイントが分かる
3.間接経費削減効果を最大化するべき時期が分かる
【想定読了時間:15分】

この記事は次のような方にお勧めです:
1.コスト削減したいがどこから手を付けるべきか悩んでいる企業様
2.オリンピック後不況に備えたいと思っている企業様
3.利益率を恒常的に上げたいと思っている企業様

~笠井恒氏のプロフィール~

国内外大手銀行、証券会社にて金融コンサルタントとしてキャリアをスタート。
資金調達やデリバティブ取引等のリレーションシップマネジャーとしても活躍した後、企業再建案件にて間接経費削減を行うことで企業を高利益化組織へと変革。

「ありがとう」と言ってもらえる金融コンサルタントを目指すべく、現在は経費削減のプロとして活躍中。10年で127社の実績を誇る。

間接経費削減のプロになったきっかけとは?

「ありがとう」と言ってもらえる仕事がしたかった

塚本:笠井さんが間接経費削減のコンサルとして活躍されるようになられたきっかけとは何でしょうか?

笠井:僕は、元々証券会社だったり、銀行だったりと20年くらい外資系の金融会社にいました。きっかけはリーマンショック頃ですね。その当時、僕は企業再生の仕事を担当してました。具体的には、銀行や証券会社が自己資金で投資した企業の企業再生です。当然、投資した側は、「とにかく利益を上げろ!」となっていますよね。利益を上げるには2つしかありません。売り上げを伸ばすか、コストを下げるかです。

しかし、売上ってやっぱり外部の人間がいきなり入っていってもそう簡単に上がるものではない。でも、投資家としては当然すぐにでも利益が出るようにしたいわけです。そうすると、いちばん簡単なのはコストを下げる。これにつきます。

コストと平たく言っても、大きく分けて3つのコストが存在します。①直材と言われる直接経費、②間接材である間接経費、そして③借入金の利息等を含むその他です。①の直材は本業に直結している部分なので、そう簡単に削減できるものではありません。物が売れなくなってはダメですから。③のその他も、利息とかって銀行と交渉しなければいけないので一筋縄ではいかないでしょ。

一番手っ取り早くできるのが②の間接費なんですよね。なので、この企業再生をやっていた時、「間接費削減やりましょう!」って提案しました。当時はやり方もよくわからなかったのですが、とにかく我武者羅に取り組みました。本当に色々調べましたね。取引先やサプライヤーさんと直接あって、お話してと。そうやって頑張ったところ結構下がったんです。初めてやったにも関わらず、全部でなんと40%も下がったんです。60億の間接費が30億とかに下がったんですよ。これがターニングポイントになりました。

このお仕事をしたことで、金融コンサルとして初めて企業さんから「ありがとうございます!」って言われたんです。それが本当に嬉しかったですし、仕事としてとても楽しいものでもありました。これがきっかけですね。やっぱり楽しいと思えないと、「ありがとう」って言ってもらえないとやっている意義を感じないじゃないですか。仕事って。

金融コンサルタントってなかなか感謝してもらえないんですよ、恨まれることはあっても(笑)。だからこそ新鮮でした。「ありがとう」って、そういわれる仕事って楽しいなって思って始めました。

塚本:それは確かに心に響きますよね。実際、企業さんにとってもコスト削減・高利益体制になれることはとても重要なわけですから。笠井:そうです。利益率が10%だったとして、30%コスト削減できたら企業さんにとってとても分かりやすいメリットになるじゃないですか。良い仕事だな、と思います。

実績企業数127社!実践値に裏付けられた戦略と実務

塚本:そこから間接経費削減に焦点を当ててコンサルティングされていらっしゃるんですね。

笠井:そうです。最初に所属したのはPSIでした。コスト削減のコンサル業界でいうと、パイオニアはDeeCorpというのがあります。そこから独立した人たちが始めたのPSIで、2番手です。この辺りの会社は、どちらかというと実行支援コンサルに該当します。そのもっと上のレイヤーに、ATカーニーだったりボスコンという大手外資ファームが存在します。こういった上流ファームは戦略メインなので、見積りを取るといった泥臭い実務はやりません。あくまで、「こういう風にやったら多分コスト削減できますよ」と、上流の話をするに留まります。その戦略を実際に落としみ、実行に移していくのが、 DeeCorp とか PSI といった実行支援コンサルです。実際に見積もり取って、サプライヤーと交渉したりといった実務です。

今でこそ僕も戦略とかやりますけど、当時はあまりそういうことに自分が向いているとは思っていなかったので、実務の方をメインに PSI に所属してやっていました。今、僕が戦略をやれるのは、この実務時代を通じて数千品目の見積りを取り交渉してきた実践値に基づくものです。 

実際に手を動かし、現地に出向き、サプライヤーや更にその下の下請けとも会って交渉してきた。そんな経験を積んだからこそ、自信を持って「こういう風にしたらいいと思います」と、言えるようになりました。実際やってきたファクトが今僕の戦略になっています。だから、この当たりはちょっと普通のコンサルの人とは入り方が違いますよね(笑)。現場に入り込み、ファクトが集まって自分の中で型ができたっていう感じですね。

塚本:なるほど。間接経費削減サービスプロバイダの構造がよく分かりました。ちなみに、この10年でどれ位のプロジェクトをこなしてこられたんでしょうか。

笠井:開示していいと言われているものは50社くらいですが、実績企業数は127社です。

塚本:10年間で127社というと相当やっていらっしゃいますよね。

笠井:そうですね。やっぱり最初は回すのが大変でしたよ。でも、ある程度の経験値が出来た辺りから自分の中でフレームが出来てきたんです。その頃から比較的効率的に回せるようになった実感があります。4~5年目辺りからですかね。何でフレームができたかというと、コスト構造というか、値段が出来上がる構造が良く理解できたからだと思います。

塚本:と、言いますと?

笠井:サプライヤーが値段を出す際、影響を与えるファクターには、単価と数量、仕様、あとサプライヤーの状況というのがあります。

塚本:サプライヤーの状況とは具体的に言うと何を指していますか。

笠井:サプライヤー自体の売上だったり、決算時期だったり。もっと言うと、その担当者のその時の成績。こういったもので、実は単価って結構違ってくるんです。

塚本:変数になるんですね、そこが。

笠井:そうなんです。なので、同じものを買うために同じサプライヤーに聞いても、時期が違えば単価が違います。担当者が違えば単価が違う。ロジックでね、積み上げていくことは出来るんです。「~~だから、XXまで下げれますよね」と。原価推定できますからね。でも、「人」が変数であるとしたら、ロジックで詰めても変わりません。ここは普通のコンサルが見逃すポイントであり、非常に重要なファクターです。

塚本:「誰」と「どのタイミング」で「どう言うか」、ということですか?

笠井:そう。そこなんです。どことやるか。いつどう言うか。なので最終的に値段を出すのは彼らなので、彼らの状況っていうのはすごく重要な変数なんですよ。

塚本:確かにそうですよね。

笠井:そうです。サプライヤーさんはただ値段を出してくれる人じゃなくて、僕は彼らを重要なビジネスパートナーだと思っています。だからこそ、彼らをすごく大事にしています。そこを大事にすることによって、僕は絶対的に他に負けない価格設定ができると自負しています。僕に出してくれる値段と、ATカーニーとかボスコン、その他のコスト削減コンサルタントに出す値段は全然違います。同じものを買うことを前提に言っています。絶対、僕に出してくれる値段の方が安い。

塚本:どのぐらい違うんでしょうか。

笠井:削減率が標準で10%だとしたら、ならして2~3割は違うと思いますよ。そこは。それが出来るのは、彼らが僕を営業ツールの一つだと捉えてくれているからだと思います。

サプライヤー側から見て、僕がコスト削減で携わっている企業さんが彼らの新規リードになるよう配慮しています。例えば、印刷広告ではイセトーさん。僕は彼らと深い繋がりがあるので、彼らにまず相見積りを取ります。彼らにとっては、自分たちのコンタクトの無い取引先、つまり新規取引先が出来るわけです。僕がコスト削減として入ることでそこと繋がりが持てるわけなんです。僕がコスト削減のためにA社に入ります。そこで、A社とイセトーに取引がなかったら、僕は印刷をやる時には必ずイセトーから見積りを貰います。当然相見積りは他からも取りますし、競争入札です。でも、イセトーにとっては新規の候補先が1個増えますよね。サプライヤーさんにとって、僕という存在が新規営業の人間が一人いるのと一緒だと思ってもらえるように働きます。

塚本:でも、他のコンサルはそういう動きはしないんですか?相見積りはどこも取りますよね。

笠井:他のコンサルファームも当然相見積りは取ります。相見積りは取りますけど、…なんて言ったらいいのかな。コンサルありき、ロジックありきでいくとサプライヤーさんのその重要性ってなかなか気づけないんですよね。心理的な深い部分というか。彼らの置かれている状況を汲む動きというか。

僕は何個もファームの仕事に入らせてもらいましたけど、動き方が違うと感じました。彼らもやろうと思えばそこは出来ると思いますけど、やろうと思わないのか、気づいてないのか、分からないです。それは。

間接経費削減ツールとプロの違い

塚本:間接経費削減サービスでいうと、最近はツールみたいなものも増えていますよね。システムがそれをやってくれます、みたいな。この辺の間接経費が削減出来るんじゃないですか?と、いったことを通知してくれるシステムもありますよね。こういったシステムが提案するものと笠井さんとでは何が違うのでしょうか。

笠井:取引先のデータベースです。今SOLOELとかそういう事務用品のツールの中にサービス系のものが入ってきていて、彼らのツールを使えば「~%削減できます!」と、なっています。ただ、出てはくるんですけど、それはSOLOELが持っているサプライヤーリストからの算出であって、僕の持ってるサプライヤーリストとは違うんです。これが僕の強みです。

ここは経験値が物を言うと思いますよ。これは日本で誰にも負けない自信があります。

だって、仙台の建設会社のサプライヤーさんいるんですけど、社長がおばあちゃんで、見積書が手書きなんですよ。今もまだ。で、「手書きじゃ困るんでPCお貸しするんで入れてください」って、言って「わかりました」ってことで、事細かにマニュアル作ってPCごと送ったんですよ。「これ使ってください」って。Wi-Fiもルーターも付けて、「ここ押してください」って全部付箋付けて送ったんですよ。メールの送り方も添付して送りました。それで、やっとPCで打ち込んでくれました。で、「もう期限がないからすぐ送ってください」と、言ったんですけど待てど暮らせど来ない。それでね、次の日にPCごと届いたんです(笑)。

僕は。そういう人たちにも見積をお願いします。 

あと、もう1つ言えるとすると、サプライヤーの業界構造の見極めが僕の強みです。どの業界にも構造があるじゃないですか。ピラミッドがありますよね。下がるか下がらないかを見るとき、まず見るポイントは、「この会社は、今どこのレイヤーのサプライヤーさんと取引をしているんだろうか?」と、いうところを見ています。

これはベンチマーク論理とかそういう話じゃありません。ベンチマークも勿論行います。でも、それと同時にその業界自体を見ます。印刷なら印刷、清掃なら清掃のサプライヤーのピラミッドのどのレイヤーと交渉しているかを見ています。いくら「もう充分下げてるから大丈夫。もう絶対お前出来ないよ」と、言われても、そのサプライヤーがセカンドレイヤーだとしたら、サードレイヤーに行けば必ず差があるわけです。

ここです。ここなんですよ、ポイントは。

塚本:そこがどこにポジショニングしているかですね。

笠井:そうです。そうなんです。だから、サプライヤーさんを探す作業というのは常にやっていますね。なんかもう感覚としてやっています。本に載ってない未上場のよく分からないようなサプライヤーさんともお付き合いがあります。

当然、「そのサプライヤーとは取引できないよ」と、言うお客さんもいらっしゃいます。そういう場合は、そのサプライヤーさんを元々取引をしていたサプライヤーさんの下に付けて、マージンはちゃんと分かるようにその分だけ抜いてもらって、といった形で動くといったこともします。

塚本:それは交渉としては相当複雑化しそうな印象ですが。

笠井:複雑化します。ただ、そもそも今の既存のサプライヤーさんは自分たちが商売を失うことがすごく怖いんですよ。特に営業の人はね。なので、その辺はちゃんと交渉すれば分かってもらえますよ。関係性が崩れるような交渉はしません。

塚本:そこも交渉に笠井さん自ら入られるってことですよね。

笠井:はい。当然入りますよ。そこは肝なので。

高利益組織化に重要なポイントと事例

コスト削減しても2~3年でリバウンドする!

塚本:交渉する時は企業側の人も含めて行うんですか。

笠井:そうですね。クライアント企業さんの若い人、調達をやる若い人をつけてもらってOJTみたいな形でやるってこともあります。このパターンは結構多いですね。

塚本:それは企業さんにとっては人材育成に繋がるので良いですね。

笠井:そうですね。コストって下げても放っておくと2~3年後にリバウンドするんですよ。

塚本:それは元の体制に戻っていくということですか?

笠井:体制が戻るというか、サプライヤー側も徐々に値上げ交渉したり、知らぬ間に仕様変えていたりなんてこともありますからね。あと、コスト削減で頑張って削減しても、その後の使い方を抑制していかないと、数量が多くなっちゃったりとか、他のもの買っちゃったりとかあります。下がって浮いた分で他の物買っちゃうっていうのは結構ありますね。

塚本:2~3年でどれくらいリバウンドするんですか?

笠井:5%~10%くらいは戻りますね。大体下がった分の一割くらいは戻っている印象です。

塚本:放っとくと値上げ交渉されて増えたりとか、不必要なものを買ったり。こういうのは、ちゃんと社内の人間を教育出来れば抑制できるものなんでしょうか。

笠井:社内の人間の教育は当然必要です。ちゃんと買える人を育てるのは重要。でも、僕が間接経費削減コンサルとしてプロジェクトの最後に企業さんにお願いしている、或いは置き土産としているものとしては、購買規定の見直しです。「パッと見た限りこことここがおかしいです」と提言します。

例えば、「今まで部長決裁で50万円前変えたものを10万円にしてみましょう」と。そうすると何が変わると思いますか?要は、決裁する人の工数が増えるんですよね、10万円に下がるわけですから。「その工数ってどのぐらいか?」というのを計算して、どこが購買規定の中で何円以上になったらいいのかというシミュレーションを行います。 

経験値から言うと、大体売り上げが100億前後だと50万円ぐらいがベスト。1000億円を超えると150~200万円くらいじゃないですかね。その辺の数字を探っていくと適正なものが出てきます。

事例:NTT東日本のケース

塚本:それによって実際にあげられた成果の事例で何か開示できるものはありますか?

笠井:NTT東日本さんですかね。NTTさんの購買規定を見直したことによって、承認作業が増えたため部長さんの工数は3倍くらい増しました。ただ、そのリターンとしてコストが全部で17%下がりました。ちょうど3年後にお聞きした時には、僕が入った当時から比べるとトータルで20%まで削減率は上がっていましたよ。

塚本:笠井さんが入っていらっしゃったのはどれくらいの期間なんですか?

笠井:僕がこのプロジェクトに入っていたのは、6カ月くらいですね。6カ月で17%下げて、その後NTTさん自らの自社努力で残り3%を削減されています。購買規定を変える、これって結構社内インパクトと効果があるんですよ。自然にガバナンスが効くようになるんでしょうね。社員の心情が変化するのだと思います。

塚本:心理的抑制ということですか?

笠井:そうですね。心理的抑制が働きます。これはすごく重要なポイントです。この効果がずっと続くか、徐々にまた支出が増えるか。その結果が出るのが大体3年後ぐらいになりますので、購買プロセスを見直した後も定期的に見直すことが重要です。

塚本:なるほど。コスト削減は一過性ではなく、「常に」行うものであるということですね。

笠井:そうです。

Part 2へ続く
Part 2では、びっくりドンキーでの事例もご紹介いただきながら、実際の間接経費削減がどのように行われているのかを伺います。Part 2はコチラ

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