フリーランス活用事例:<北米編>産休・育休のケース

この記事のポイント:
1.産休・育休における北米のフリーランス活用事例が分かる
2.北米企業の人財流出防止施策事例が分かる
3.北米における被雇用者・フリーランスのキャリアの捉え方が分かる
【想定読了時間:25分】

この記事は次のような方にお勧めです:
1.人財活用において業務委託を検討している企業様
2.働き方改革において新しい人財起用の在り方を検討している企業様
3.フリーランスとしての働き方を検討されている方

少子高齢化が進む中、日本の労働環境は働き方の多様化と共に変革の過渡期にあります。企業が変革し勝ち残っていくためには、業務効率化の促進に併せて優秀な人財の確保とリソース配分がより肝要となっていくでしょう。そのためにも雇用にまつわる仕組みの見直しは緊急かつ重要なテーマと言えます。

この記事では、こういった課題に先んじて対応し変革してきた北米の事例を基に、業務委託(フリーランス)の活用方法や制度面についてご紹介します。雇用主、被雇用者、そしてフリーランスの方々にとって、「やりがいのある働きやすい環境・制度」とは何か?を考える一助となればと思います。

1.北米に見る業務委託から始まるキャリア 

管理職の「産休・育休の穴」は業務委託で補充

北米のフリーランスの活用ですが、日本でも馴染みのあるプロジェクトベースでのポジション補填(プロジェクトマネージャー等)に加え、その他にも大きく2パターン存在していると言えます。

1.代替可能な下流工程業務の補填
2.期間限定での管理職の穴埋め

まず、下流工程業務の補填ですが、コールセンター業務等が良い例かと思います。まだまだ人海戦術で乗り切る必要のあるこういった業務をどういった形で補充するかは、企業にとって経営戦略にかかるテーマとも言えます。M&A等でインド等発展途上国の企業を買収し一括してオペレーションを代替させる等の例もありますが、なかには人財エージェントを活用し、200人近いフリーランスをコールセンター機能として業務委託するケースが上記に該当します。この場合、全てのフリーランス(現地在住)と個別契約を行うため、契約管理が煩雑となることが企業にとってペインポイントです(想像に容易ですね)。

次に、日本ではまだ浸透していないフリーランスの活用の仕方として、「期間限定での管理職の穴埋め」があります。日本でもプロジェクトにおいてPM(プロジェクトマネージャー)やPMOポジションを業務委託することはありますが、北米のユニークなケースとして女性管理職の産休・育休時(※育休である場合は男性管理職も対象)での業務委託の活用があります。

北米では、産休・育休のケースにおいてもハイスペックなフリーランスを活用することで「穴を開けない」仕組みを取り、現場への負担を軽減する処置がとられています(※北米の産休・育休制度については後述)。産休に入る女性管理職の多くは予定日の直前まで働くことが多いのため(昔の日本っぽいとも言えるかもしれません)、企業は当該管理職が産休・育休に入る2~3か月前から後任となるフリーランスを見つけ、休暇取得1か月前にはチームに迎えることができるように準備し、引継ぎを行います。

こういった産休・育休におけるフリーランスの業務委託契約は、8か月以上の「長期契約」です。契約期間中に交渉し、フリーランスをそのまま正社員として雇用することも珍しくはありません。業務委託としてフリーランスを迎え入れることで人財と組織のマッチングが見極められるため、雇用する側としても、される側としてもある種自然な流れとも言えるかもしれません。

日本人の感覚からすると「じゃあ、戻ってきた管理職は職を追われるのでは?」と、いう疑問が生まれるかもしれませんが、答えはノーです。アメリカとカナダではポジション保護の期間に違いはありますが、産休・育休に入った管理職のポジションを奪うことは基本的に法律で禁止されています。また、あくまでも「当該管理職が戻るまでの補填」であるため、企業としては抜ける社員より単価の安い人財を短期的に雇用しコスト削減を目指すことが一般的です(つまり、社員よりも若干スキル等が劣るケースが多いと言える。)そのため、社員が職場復帰した場合、業務委託の存在が不要になるケースもありますし、正社員雇用の必要性があると判断される場合は別の役職やポジションを作り、現場設計することで環境整備を行います。

業務委託から始まるキャリアアップの例

産休・育休の穴埋めとしてのフリーランスの起用は、企業自身が求人広告を出したりエージェントを活用したりと積極的に行われます。フリーランスとして活動している個人や求職中の大卒者等は、こういった求人機会からキャリアをスタートさせることも常です。

例えば、大学からカナダに留学し、卒業後CPAの資格を取得した日本人女性Y氏も上記の形でカナダでのキャリアをスタートさせています。現在は、アメリカ企業の人事にてチームリーダとして働くY氏ですが、キャリアのスタートは産休・育休の穴埋めとしての業務委託契約でした。大学卒業後、CPAの資格勉強と並行して求職活動をしていた際、現在所属する企業の求人広告(産休に入る人事マネージャーの補填ポジション)を見て応募しています。当初は1年契約での人事マネージャー補佐業務でしたが、1年の契約が切れる数か月前に経理部にて別の「産休の穴」が空くことになったため、Y氏に「経理の部署に移らないか?」というオファーがあったそうです。そのため、当初の契約1年を待たず、経理との8か月契約を追加で巻くという「延長」が発生しました。

面白いことに、経理の部署に異動した後、Y氏の上司に当たるディレクター (人事のトップ) も妊娠したため、元々産休をとっていた管理職が復帰した後も、ディレクターの穴埋めとして更に追加で契約を延長することになったそうです。この時は、ディレクターというトップの休職だったため、企業は「ディレクターの穴埋め」という形を取らず、Y氏をそのままキープするための新しいポジションを設けたうえで、マネージャークラスのフリーランスを追加で起用し、間接的穴埋めを行っています。結果として、Y氏は2年半をこの企業にフリーランスとして「勤務」する形となったそうですが、2年半を迎える際に企業より正社員としての打診を受け正式にジョインすることを決意したそうです(その際、企業はY氏が未だに業務委託だったことを知らなかったそうで、CFOから「君は業務委託だったのか?!」と言われたというエピソードは海外ならではかもしれません。)

勿論、どのような戦略を取るかは企業のその時の状況により異なりますが、上記のケースのようにディレクター等の経営に近いポジションの穴埋めの場合、いきなりフリーランスで同等ポジションを入れるよりも、その1~2つ下のポジションをプレイングマネージャーとしてフリーランスで補填し、コスト削減を図りながら業務を回すという人事戦略が取られることは比較的一般的です。

フリーランスに対する北米の保障制度

こういったフリーランスの長期契約が珍しくない北米ですが、フリーランスに対する保障制度も契約期間に応じて正社員と同等となる「同一労働同一保障制度」が敷かれています。 

上記のY氏のケースですが、カナダでは1年を超える業務委託の場合、正社員と同等の保障制度が適用されることが義務付けられています。また、8か月以上(※600時間以上労働している必要がある)であれば失業保険も適用されます。そのため、8か月未満の求人広告は「引き」が弱くなることも多く、企業があえて長期契約(通常8か月以上)で人財サーチを行うことが産休・育休等の穴埋めの場合は多いようです。

より優秀な人財を迅速かつ円滑に囲い込むためにも、企業は国の敷く制度と自社での人事コスト等を勘案しながら業務委託の活用計画を立てることになります。

2.「産休・育休」もキャリア転職の機会になる

北米の産休・育休制度

産休・育休ですが、なんとカナダでは産休・育休は失業扱いとなります。そのため、「失業中」の個人を国が失業保険によってカバーします。つまり、企業は一切の負担を負うことはなく、国が失業保険として当事者の年間所得の約55%にあたる金額を支給する仕組みとなっています。

では企業は何をするのでしょうか?

カナダで見かける代表的なものとしては、失業保険が適用されるまでの期間である約2週間の給与保障が一般的な福利厚生です。

日本企業からすると「それだけで済むのか?」という感覚ではないでしょうか。しかし、これはあくまでカナダ企業の「表向きの制度」です。

実は、これとは別に個人主義ならではの面白い「組織vs個人」交渉が存在します。それが、「トップアップ」と呼ばれる特別報酬です。産休・育休は「失業保険」で賄われると言いましたが、当然支給額には上限(年俸CAD 65,000の55%まで)があります。つまり、この金額を超えた年俸をもらっている個人にとっては「減給」となってしまいます。

この損失に対して、企業が特別報酬を個人に対して提示するといのが「トップアップ」です。簡単に言うと、「あなたが休職後に戻ってきてくれたら、求職中に支払われていない年俸の差額はお支払いしますよ」というものです。

しかし、全ての人財に対して企業がこれを提示するわけではありません。これは、完全に企業と個人間での交渉・契約事であり、個人主義と実力主義ならではの報酬とも言えます。

企業が手放したくない人財であればあるほど、オファーされるトップアップは高く、金額以外の待遇も俎上に上がります。提示金額や条件も当然人によって異なりますし、全くオファーされない個人も存在し得るという訳です。 

では、アメリカではどうでしょうか?

アメリカは、カナダほど国の制度が整っていないのが現状です。アメリカでは、FMLAという制度により産休・育休中の社員のポジションを守ることが義務付けられています。しかし、この法の下では、8週間程度の短い期間に限定されたポジション確保の義務付けのため、それを超えての休職期間の場合、企業は人財を解雇することはできませんが既存役職をキープする必要はなくなります。

そのため、ここでもトップアップのような組織と個人間での交渉と契約が発生します。人財が優秀であれば優秀であるほど条件は良くなりますし、まったくオファーされないケースも当然存在し得ます。

あくまでも国が設定する制度は「最低条件」であり、企業は自社の自由裁量の基、優秀な人財の獲得と流出防止の策として個人と交渉しながら個別契約を行っているのがカナダとアメリカです。常にスキルを磨き、社内外から市場価値を認めてもらえるような個人であれば、組織に対して強気の姿勢で臨むことが出来るとも言えます。まさに完全な個人主義、実力主義の面白い事例と言えるのではないでしょうか。

産休・育休中がキャリア転職の機会になる理由

人財確保と流出防止と言いましたが、トップアップのような個人宛の特別報酬制度は企業にとって重要な人財流出防止策の1つです。 

日本ではあまり一般的ではないかもしれませんが、産休・育休中の人財は休暇中の期間を活用してキャリア転職することがあります。

高見を目指し、日々スキルアップをしているハイキャリアの個人はLinkedInのプロフィールも常に更新しており、常にヘッドハンターやリクルーターからのオファーを受ける状況を自ら作っていますし、自身の市場性を確認するバロメーターとしてこういったものを活用しています。

そのため、日々の忙しさから離れ、自身のキャリアやライフスタイルについて考える時間を多く含む長期の休職は、企業にとっては人財流出のリスクであり、個人にとってはキャリアを見つめなおす機会となり得ます。

女性が育児と家事を行うことが未だ「普通」とされる日本においてはまだ顕著に見られないケースではありますが、北米では共働きにおける育児と家事は「外注」することが一般的です。子育ては託児所とベビーシッターを雇うことで代替し、家事においても役割分担を決めたり、外のサービスを活用することで家庭の状況に合わせ負荷を減らすことがパワーカップルと呼ばれる共働き夫婦や、単親家庭では普通です。女性も男性も、常に「自分はどう生きていくべきか?」を軸にキャリアを考える環境に置かれていると言えます。

こういった環境に賛同するかどうかは見解の分かれるところかもしれませんが、少子高齢化の進む日本社会において「女性が全てをこなす」ということには限界がきていることも事実です。また、男性が全てをこなすということも非現実的です。どちらか一方に負荷が来る仕組みは、歪みを生むだけで根本の問題解決にはなりません。お互いにとって負荷のない在り方、そして組織として生産力を高めるためにはどういった環境が適切なのか。それを個人、そして組織それぞれが考える必要があるでしょう。

産休・育休中のキャリア転職の例

ここでもY氏の企業のケースを例にご紹介します。コンプライアンスの部署でハイスペック人財が必要となった際、Y氏の所属企業はエージェントを活用したダイレクトリクルーティングを通じて適任者を見つけることに成功しました。しかし、この人財には所属企業があり、かつ産休中だったため、「決断は待って欲しい」との返答でした。Y氏の企業がオファーしているポジションに興味はあるものの、エージェントを通じて得た情報では、彼女の所属企業はトップアップとして1000万を超える報酬を復職後に用意しているとのことでした。こういった状況を考慮しエージェントは、Y氏の企業がこの女性を獲得するめに「オファー内容を再考し、転職報酬を引き上げるべき」と助言してきたそうです。再考の末、リスクを承知でY氏の企業は、金銭での交渉は避け(1000万は切るものの元々用意していた転職報酬額を維持)、シニアマネージャーという昇格ポジション(彼女の既存役職はマネージャー)を用意するというオファーを出すことにしました。

結果として、この人財は自身の所属企業からの金銭報酬を蹴り、Y氏の企業への転職を決断したそうです。金銭という目に見える対価ではなく、シニアマネージャーという役職からしか得ることの出来ない「更なる挑戦」というキャリア機会が魅力だったそうです。

出産後、別の企業に転職し、かつ昇格することで自身の更なる高見へと挑戦する。まさに、ライフイベントをキャリアの転機と捉え挑戦することで、自分の市場価値を更に高めて行きたいという個人の生き方の例と言えます。

3.「強い個」を管理職に集められる組織は強い

キャリア志向は組織のためにあるのではない

このように個人主義と実力主義が定着している北米において、優秀な人財の確保と流出防止策は企業の自由裁量により決定される「個人との契約」に依存していると言えます。企業に対する帰属意識は「エンゲージメント」等の形で存在していますが、それはあくまで愛着であり、個人の人生と一心同体ではありません。

「自分はどうありたいのか?」を常に考え、自分の市場価値を見極めながら常に動いていること、自身にあったキャリアを自発的に選択すること、そしてそれがいたって自然に行われていること。そんな一例として 今回ご紹介した育休・産休のケースを見ることが出来るのではないでしょうか。

日本においても社会課題を軸に働き方が変革する昨今、より個人主義の色が強くなっているように感じます。モチベーション高く、自己実現意識の高い優秀な人財であればあるほど、自身にあった「挑戦」を求めながら自らプロアクティブにキャリアデザインする時代に今後更に変わっていくでしょう。

そんな優秀な人財を獲得するために、流出させないためにどうするべきなのか。企業として真摯に向き合う必要があると言えます。

「優秀な人財の起用」だからこそ組織と個人の相性が重要

優秀な人財を組織をリードする人財として起用できることは、企業にとって重要なアセットとなり得ます。こういった人財の獲得をいかに行うことができるか、社内における制度設計や採用の在り方、そしてリストラの在り方をも見直していく必要があります(自主退職を促す形のリストラでは、外で活躍できる人財のみを流出させるリスクをはらんでいます。)

従来の正社員雇用のプロセスから、北米のような業務委託を経て採用に結んでいく等、人事にまつわるやり方には様々な形が存在します。まずは、自社の経営課題と戦略を踏まえたうえで、どのような人的リソースが必要かを見極め、必要となる人財をフリーランスという業務委託で補填してみることは、相性を確かめる上でも、リソースの必要性を見極めるうえでも肝要と言えます。最初から正社員雇用に固執するのではなく、まずは必要と思われる人財をトライアル&エラーの気持ちで迎え、成果を確認しながら進めたほうが組織にとってリスクは低く、投資対効果も高いこともあり得ます。

Project Base

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