ハラスメント対策が法制化:あなたの企業は対応大丈夫?2/2

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事故時の初動と速やかな復旧:何が問題なのか

塚本:通報や相談というのは被害者や目撃者の初動ですが、それを受けて企業が何をするべきかという初動はどうなっているんでしょうか。

根岸:大体の企業さんは、決まっていないことが多いですね。マニュアルが無い。なので、事例等を参考に、「ああいう時どうするか決めておきましょう」と、言ってマニュアルを設定するように促しています。

例えば、相談者から激烈な被害届が来たとします。そしたらすぐにエスカレーション。それは、まずどこにするか、どのルートで行うのかとかですね。これは、周知することが大事です。

そして、「何」が起こったら、という始まりの部分を明確にすることが重要。そうしないと、 人は動けないですから。判断できないんですよ。良くないことが起こってる、報告しなきゃいけないんだ、ということに。

塚本:やっぱり難しいものですか。

根岸:そうですね。メンタルヘルスもそうです。遅刻ばっかりとか、パフォーマンスがおかしい部下を、管理部が「発見」することはできるんです。問題はその後です。

人事部が、「管理職は何にもやってくれないから。そんな不調者をほったらかしにして!」って、言うんですけど、手順が決まってないから出来ないんです。

なので、フローチャートを作り、すごく詳細に決めることにしています。
「こういう時はこう。こうなったらこう」と、それを管理職に周知させるように徹底します。

周知されて、分かれば出来るんです。大人ですからね(笑)。
「〇〇部長は、面倒見がいいからできるんだよね」とか、そんな問題じゃないんですよ。 マニュアルが重要なんです。日本人は、なぁなぁな感じとか暗黙知が好きだから、全てをパキッと決めてしまうのは苦手かもしれないですけど、多様化する時代にフィットした企業であるためにはガイドラインやマニュアルは絶対に必要です。

企業では何が起こっているのか?

塚本:今までのお話を聞いて、未然防止・事故時の初動・速やかな復旧の全てにおいて事前(平時)に「明確で詳細な行動定義」が成されていないことが問題であると分かりました。そのような状態にある企業さんでは、いったい何が起こっているんでしょうか。

根岸:例えば、ストレスチェック。これは義務化されましたよね。なので、「チェックを行う」「何をチェックする」というラインまでは、徹底されていると言えるでしょう。明確ですからね。従いますよね。

問題は、その後なんです。「その後、何をするべきか」は定められていません。
だから、チェック後の措置はうやむやです。

大企業でストレスチェックをバーッと何百人も一斉に受けさせますよね、そうすると個人個人に結果が行きます。で、個人はそれを見て自分で色々ストレスコントロールしましょうって記載された紙をもらうわけです。これが個人向けの「事後措置」です。

もう一つは企業側に対して、部署ごとの結果も企業に渡されるんですね。で、厚労省はそれを利用して、「ちょっと疲れてる部署があったら、会社が職場の改善を試みましょう」と、言ってるんですけど、それを実際にやっている会社はほとんど無いと言っていいでしょう。

この理由がまた興味深いんですよ、日本人的というか。
「そこのマネージャーを傷つけるかもしれないから、注意できません。」って、言われるんです。

塚本:え?どういうことですか。

根岸:「波風が立っちゃうかもしれない」と、言われるんです。「俺の部署に文句つける気?」とか、言い返してくる営業部長さんとかいらっしゃるからでしょうね。 こういう企業文化といいますか、染みついてしまっている「風習」から変えていけるようガイドラインを設定し、マネージャーレベルの大きな意識改革が必要と言えます。これはトップダウンでやるしか無いでしょう。

意識を変えるとは?

塚本:根岸さんは研修なんかもやっていらっしゃいますよね。意識改革はそういった研修も含めてデザインされているんでしょうか。

根岸:そうですね。やっぱり「差別意識」をすべて取り去ることに焦点を当てています。「差別してないよ」って言っても、それをやってしまうのが人間だと思います。

私が研修なんかでよくやるのは、アンコンシャスバイアス・テスト(潜在的バイアスチェック)です。これ、皆さんハッとされますよ。ハッとする。まずは、これだけでも全く違うと思います。
「こう思ってたのか、俺/私は」と、気づくことが始まりだと思います。

塚本:意識するだけでだいぶ変わると思います。後は、その意識を維持できるかではないでしょうか。

根岸:そうですね。筋トレと同じです(笑)
どこに効いてるのか、それを意識して筋肉を動かすとより良いっていいますよね。

塚本:自分の頭で考えられるようになるには、常に自分の底にある意識に対して「今、私は差別をしてないだろうか」と、自分の全ての発言に注意して行動しなければならないと思っています。

根岸:そうですね。「あなたは、その発言を社長の奥さんに対してしますか?」「クライアントに向かって今の言い方しますか?」と。もし、答えがNOであれば、それは間違いなく止めた方がよい言動でしょうね。

企業は何故変わるべきなのか?

塚本:企業は、何故「働きやすい職場づくり」に意識を向けるべきだと考えますか?

根岸:イノベーション、グローバリズムこれらを実現するためには、ダイバーシティが必要だと思っています。ダイバーシティとは、多様性を受け入れられる環境が整っていなければ実現しません。多様性とは、価値と価値のぶつかり合いです。それを許さないのが差別や偏見、固執的な思考ですね。だから、意識変革が必要ですし、組織の風土改革が必要です。

社員が安心して活発に仕事に集中でき、発言でき、ディスカッションできる環境が築かれ、それが平等に評価される環境が整備されれば、ダイバーシティにもグローバリズムにも耐えうる土台になるでしょう。勿論、生産性も上がると思います。

ダイバーシティが尊重される環境があるとイノベーションが起き、イノベーションが起きればグローバリズム(グロバールでも勝っていける)はできると思うの。

塚本:そうですね。

根岸:「年下からものを習うと、負けたような気がする」って、発言する方もいらっしゃるんですけど、おかしな話だと思いますよ。スキルがある人からものを習うことは勝ち負けではなく、自身を高めるための一歩なだけですよね。

塚本:その通りですね。自分に足りないスキルは習得し、常に高める。自分の市場性を常に意識し、向上心を持ち続けていれば、「負けた」とかそういう次元の話では無くなると思います。そういう意味では、実力主義をもう少し企業は取り入れるべきではないかと思います。

根岸:年齢や性別やセクシュアリティ等に関係なく、企業にとって必要な人財、つまり必要なアウトプットを出してくれる人財が気持ちよく働ける環境が求められていると思います。

エイジズム&逆エイジズムもありますからね。
人を、歳で「できる」「できない」と言うのではなくて、大事なのはその人の能力と性格ですよね。あと、当然ですけど性別も関係ない。

塚本:そう思います。本当に自分のところで必要な人財スキル、性格を定義し、そこに当てはまる人を雇うべき、発注するべきであって、その人の属性で決めるべきではないと思います。

根岸:合致してればいいよね。性別とかゲイだとか年齢だとか、そういうのは関係ない。 事業をやる目的は、利益と企業価値の最大化です。利益だけでは、価値の最大化にはなりません。そこをね、狙っていってほしいと思っています。そんなことは、経営者はわかりきっているんだけど、企業利益と企業価値の最大化をいざどうやるかとなると、「今のをベースに考える」と、いう思考に陥ってしまう気がします。

だからこそ、多様性が大事なのではないかと思います。
そして、それを受け入れる風土が大事です。

働く環境と求められる変革

今年は、安倍総理が着任時に強く呼びかけていた202030の年でもあります。企業は、何か変革を迎えることができたのでしょうか。加えて、6月にはパワハラ防止法も施行され、企業は「緩やかに」政府から変革を求められている状況が見てとれます。

それでなくとも、2020年は年明け早々に襲ってきたコロナの影響もあり、日本の勤務環境は一気に変革を強いられる事態となりました。 止まることを知らない少子高齢化、人手不足。そして、ウィルスの脅威。
そういった環境の中で、生産性を高め、成長し続けるために求められることは、既存事業の見直しだけでなく、その運用体制の在り方そのものにもあるのではないでしょうか。

今までの当たり前を「守るべきもの」と捉えるのではなく、本当に必要なリーンな体制と運用体制を見極め、本当に必要な人財を出来る限り柔軟性を持った形で配置することが今求められていると思います。

変革を求められる今だからこそ、多様な声を聞き、変化への舵切りを行うことが必要ではないでしょうか。

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